畜産物食品製造と関係の深い食品微生物の機能性解析
  Effect of oral administration of the IgE-suppressive wild yeast strain Saccharomyces paradoxus P01 on the development of atopic dermatitis-like symptoms in NC/Nga mice. Kawahara, T., Nakayama, D., Tanaka, K., Yasui H., Food Science and Technology Research, 21(2):, 2015.
  Suppressive effect of wild Saccharomyces cerevisiae and Saccharomycesparadoxus strains on IgE production of mouse spleen cells. Kawahara, T., Nakayama, D., Toda, K., Inagaki, S., Tanaka, K., Yasui, H., Food Science and Technology Research, 19(6):1019-1027, 2013.
 

 Saccharomyces属酵母はアルコール飲料やパンの製造に欠かせない食品微生物です。一般に使用されているのは発酵力に優れた産業用酵母ですが、環境中から分離される野生酵母(天然酵母)も 広く親しまれています。野生酵母といえば独特の風味が特徴的ですが、これらの酵母を食品として摂取した場合の生体調節機能についてはほとんどわかっていませんでした。私たちはこの点に着目し、木曽町地域資源研究所のご協力を得て、環境中よりSaccharomyces属酵母を分離し、 私たちの免疫機能に及ぼす働きについて研究を進めてきました。その結果、一部の菌株に即時型(T型)アレルギーの原因となるIgE抗体の産生を抑える働きがあることを発見しました。 現在唯一のプロバイオティクス酵母として知られるSaccharomyces cerevisiae var. boulardiiにもIgE抑制作用は報告されていないため、その作用メカニズムの解明が待たれます。

 
IgE産生を抑制する酵母
抗アレルギー作用が
期待されます
Inhibitory effect of heat-killed Lactobacillus strain on immunoglobulin E-mediated degranulation and late-phase immune reactions of mouse bone marrow-derived mast cells. Kawahara, T., Animal Science Journal, 81(6), 714-721, 2010.

 即時型(T型)アレルギーの原因となる脱顆粒反応を行うマスト細胞は、近年の国内外の精力的な研究により自然免疫応答を担う働きも持っていることが明らかとされてきています。私たちは自然免疫賦活作用を持つ食品素材である乳酸桿菌(Lactobacillus属菌)の機能性に着目し、マスト細胞と乳酸菌の接触が脱顆粒反応にどのような影響をもたらすかについて検討を行いました。その結果、菌種によって違いがありますが、乳酸菌の刺激後にはIgEを介した脱顆粒反応が抑えられる現象が観察されることがわかりました。 乳酸菌とマスト細胞の直接的な相互作用に関する知見は少なく、その抑制効果がもたらす生理的な意義にも興味がもたれます。


信州に根差した食品成分の機能性解析
  Inhibitory effect of a hot-water extract of Japanese big-leaf magnolia (Magnolia obovata) on rotavirus-induced diarrhea. Kawahara, T., Tomono, T., Hamauzu, Y., Tanaka, K., Yasui, H., Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, doi: 10.1155/2014/365831:365831, 2014.
放射状に葉が付くホオノキ
朴葉巻きのスタイルに
さらなる秘密が?
 

 ホオノキ(Magnolia obovata)はモクレン科の落葉高木で、樹皮は生薬の「厚朴(和厚朴)」の原料としても有名です。朴の木の葉は「朴葉(ほおば)」と呼ばれ、食物の包装材として伝統的に使用されてきました。朴葉の機能性についてはほとんど明らかにされていませんでしたが、食の安全性に関わる機能性について検討した結果、下痢症の原因となるロタウイルス下痢症を抑制する作用が明らかとなりました。食品素材としても注目を集めてきている朴葉ですが、厚朴と朴葉では含まれる成分に大きく違いがあるため、その点について解明を進めているところです。

  Bacteriocinogenic lactic acid bacteria Lactobacillus curvatus strain Y108 isolated from Nozawana-zuke pickles. Kawahara, T., Iida, A., Toyama, Y., and Fukuda, K. Food Science and Technology Research, 16(3): 253-262, 2010.


Y108株によって
形成された
阻止円

 

 野沢菜漬の保存性に注目し、分離された乳酸菌の抗菌作用について検討を行いました。数多くの菌株からスクリーニングを行った結果、乳酸桿菌の1株(Lactobacillus curvatus Y108株)に抗菌活性が見られたため、その作用物質の解析を行いました。その結果、この物質はペプチド性の抗菌物質であるバクテリオシンの1種であることが明らかとなりました。バクテリオシンは、経口的に摂取された後に体内で普通のタンパク質のように消化されるため、安全性の高い天然の保存料としての期待が高まっている抗菌成分です。これまで野沢菜漬からバクテリオシン産生株が報告された例はなく、その優れた伝統的な保存特性の一端が示されました。

 
  Inhibitory effect of hot-water extract of quince (Cydonia oblonga) on immunoglobulin E-dependent late-phase immune reactions of mast cells. Kawahara, T., Iizuka, T. Cytotechnology, 63(2): 143-152, 2011.
  Anti-allergic effect of a hot-water extract of quince (Cydonia oblonga), Shinomiya, F., Hamauzu, Y., and Kawahara T. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 73(8), 1773-1778, 2009.

 マルメロ(Cydonia oblonga)は、中央アジアが原産といわれる果実で、長野県諏訪地方を中心に栽培されています。果実は硬いためそのまま食べることは難しいですが、香りが非常に良いことから飲み物などに加工されて利用されています。咳などの喉の症状に良いとされるマルメロ熱水抽出物の抗アレルギー作用を検討した結果、アトピー性皮膚炎モデルマウスの症状軽減作用が認められました。また、即時型(I型)アレルギー反応に関わるマスト細胞の脱顆粒反応に対しても抑制作用があることが明らかとなりました。
 またその後の研究によりマスト細胞の脱顆粒誘導後に起こる遅延相応答(炎症性サイトカインの産生誘導やロイコトリエンC4、プロスタグランジンD2の産生誘導)に対してもマルメロ熱水抽出物は抑制効果を持つことが明らかとなりました。

 



カリンでしょうか?
いいえ
"マルメロ"です!

 
 
食品のアレルゲン性評価に利用可能な機能性マスト細胞株の樹立
  Establishment and characterization of mouse bone marrow-derived mast cell hybridomas. Kawahara, T. Experimenta Cell Research, 318(18), 2385-2396, 2012.

 マウスの骨髄細胞から分化誘導することで得られる骨髄細胞由来マスト細胞(BMMC)は、粘膜型マスト細胞のモデル細胞として広く用いられています。当研究室ではこのBMMCを同系統マウスのマスト細胞腫と細胞融合することにより、機能性を保持したまま不死化した マウスマスト細胞ハイブリドーマ(MMCH)として樹立できることを明らかにしました。
 BMMCは、マスト細胞特有の様々な機能性を持つ反面、生育に成長因子(IL-3) の必要性、分化誘導に要する時間や寿命の問題、培養系での他の細胞の影響を除外できないなどの不都合もあります。 樹立されたMMCHの機能性解析によりこれらの問題の多くが克服できることが明らかになり、その応用が期待されます。

 


樹立されたMMCH
(スケールバーは2 μm)

 


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